スーパーヒーローに憧れる童貞のマンガ・オタク、デイヴは、なんの取り柄もない高校生。特別なパワーもないのに、ネット通販で購入した衣装を着用し、キックアスを名乗って街のゴミたちを始末することを決意。出だしは大失敗だったが、悪党どもを懲らしめる様子がYouTubeにアップされ大人気を呼び、メディアは彼をスーパーヒーローとして祭り上げる。彼に触発されて新たなヒーローたちが誕生し、キックアスは彼らとチームを組んで極悪犯罪組織との一大決戦を迎えるが・・。
アメコミ映画の概念を覆す傑作である。子供が主役なのにR指定というのも納得なエクストリームなバイオレンスが全編を貫くブルータルな作品。とにかく過剰なほど、ばんばん人が死ぬ。コスチュームを身に包んだことでヒーローになれると妄想しているキックアスが、出鼻でいきなり瀕死の重傷を負うという意表を突いた導入シーンは猛烈にぎょっとさせられるし、不穏な作品であることを示唆。本作の実質的な主役と言える、ヒット・ガールの身体能力が高く武器の扱いに卓越した華麗なスーパー・アクションが壮絶でトゥー・マッチすぎて笑ってしまうが、ジョン・ウー映画の魂を見事に受け継いでいる。10歳の可憐な少女が冷酷な最強戦士というギャップも痺れる(演じるのは恐るべき天才子役女優クロエ・モレッツ)。彼女を一流の戦士に育て上げた父、ビッグ・ダディを演じるニコラス・ケイジの頼もしい存在感と父性も安心感をもたらす。コメディとバイオレンスの折衷具合も素晴らしく、ドラマにも泣かされるものがある。
この映画には特別な力を持ったスーパーヒーローは登場しない。みな普通の世界に生きる生身の人間である。ヒーローはなろうと思ってもなれるものではないし、なったときは命がけの多大な責任を背負うことになり、その宿命は過酷なものとなる。確かに過激な作品だが、ただの夢物語や絵空事ではなく現実的なヒーローと悪の戦いを表現するための必然のバイオレンスなのだ。こんなアメコミ映画を待っていた!(小林真里)
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