2010.07.09 Fri
『ぼくのエリ 200歳の少女』トーマス・アルフレッドソン監督「観客に不穏な気持ちを与えるのは実は世界で一番簡単。難しいのは、ユーモアを持って、恐怖の本質を感じさせること。」

「繊細で、怖ろしく、詩的。絶対に観なければならない映画。」(ギレルモ・デル・トロ)、「2008年ベスト・ムービー!」(エドガー・ライト)と惜しみない賛辞が贈られ、トライベッカ映画祭グランプリほか世界各国で60の賞を受賞。公開されるや否や本国スウェーデンはもとより、ヨーロッパ、アメリカで大ヒットを記録した『ぼくのエリ 200歳の少女』。既に『クローバーフィールド』のマット・リーブスが『Let me in』というタイトルでリメイクし、全米公開が決定している。
美しくも哀しいヴァンパイア・ホラーの傑作を生みだしたトーマス・アルフレッドソン監督に直撃した。
Q:プロデューサーから企画を持ち込まれた際に、監督として興味を持ったポイントは?『ぼくのエリ 200歳の少女』は今までの経歴とはカラーが違うのでは?
違うもののようにみえるかもしれませんが、脚本を読んで鳥肌が立つかどうかが基準。コメディでも、ドラマでも、ホラーでも、ロマンスでも「技術」は同じだから問題ない。大事なことは、いいものが作りたい、ということ。確かに最初にプロデューサーから話が会った時は、少しクレージーな感じがしました。「なぜぼくに?」って。でも実際に原作を読んでみて、物語じたいが普遍的であり、典型的なホラーではないし、自分に合ってると思いました。
Q:映画化にあたり、脚本家とはどのような点について最も話し合いましたか。
会ってすぐに感じあうところがありました。お互いに似てはいませんが、理解し合えた。映画を作る上で大事なのは、同じ視点を共有するのではなく、理解しあうこと。原作はベストセラーであり、多くの人からリスペクトされている。映画化するに当たって何が一番大事なことなのか、テイストやトーンに行きつくのが大事なこと。
Q:原作はベストセラー、映画は世界各国で公開され、多くの賞を受賞しました。何がそんなに多くの人の関心を引き付けたとお考えですか?
人々が思う、とてもスウェーデンっぽいテイストでありながら、誰でも感情移入しやすい普遍的な物語なので、特に(受け入れられる)地域を限定される必要がなかったのでは。
自分は社会の外にいて誰にも受け入れられず、人と一緒にいたいのに、もしくは一緒にいるにも関わらず、受け入れられていない、ありのままの自分を理解されていない、と思う感情は誰でも感情移入ができる事柄ですから。
Q:オスカー、エリともほとんど演技経験がなかったようですが、とても素晴らしい演技でした。どのように演出したのでしょうか。
こどもを演出するルールは「嘘をつかないこと」。彼らに対面し、彼らが理解できる言葉でシンプルに説明し、彼らの視野に従い、彼らの言うことにも耳を傾ける。彼らは時にとても賢いことを言うしね。ひとつ例をあげると、オスカーをおぼれさせるシーンで子役の一人が「これが終わったらみんな僕のことを大嫌いになってしまう、泣きそうな気分だ」というので、「なら、泣いたらどうだ」とアドバイスした。ひどいいじめをしながら、その一方で、同時にいじめている自分に泣いてしまう気持ちもある。これは演じた彼自身の感情からでてきたことだから、とても強い。台詞を言わせるのも大事だが、彼らの言うことに耳を傾けること、これがこどもを演出をする上で一番大事なことかな。
Q:猫が襲撃するシーン、エリが壁を這うシーン、ラストのエリの激しい残虐シーンなど毒のあるユーモアを感じましたが、描く上でこだわった点はありますか?
できるだけ対象から距離を置くことで強いイメージを作ることができる。観客に想像力を働かせることが大事。観客に不穏な気持ちを与えるのは実は世界で一番簡単なこと。難しいのは、ユーモアを持って、恐怖の本質、核を感じさせること。
グロいシーン、暴力的なシーンはみせずに、観客自身がピースをつなげあわせるんだ。特にラストについては、結果をみせるだけで、過程は描かなかった。直接的には描かない分、本当の意味での暴力性が浮かび上がった、と思っている。
Q:ガス・ヴァン・サントの映画を髣髴とさせるという声もあります。好きな映画監督は?
自分では、他の映画監督から影響を受けないようにしている。10代の大学生の頃は、当時人気のあった監督の映画をたくさんみたけどね。スコセッシやコッポラ、クローネンバーグ。70年代~80年代の初めのころ。あとスウェーデンのいろんなコメディもたくさんみたよ。今は昔ほど映画をみない。それよりも映画作りの過程では画家のほうに強い影響を受けたよ。ムンクの絵の肌質とか。
Q:監督にとってのヴァンパイアのイメージとは?
今回はヴァンパイアのサバイバルを軸にしている点が通常とは違うと思うよ。、ヴァンパイア映画は伝統的にセクシャリティを扱うものが多く、女が男に咬ませる無防備な状態、無意識さにセクシャリティが出ることが多かったと思うけど、今回の映画はイノセントさ、ノンジェンダーな部分が前面に出ているからね。
Q:次回作の構想・予定は?
初めての英語映画で、ジョン・ル・カレ原作の「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の準備をしています。キャスティングに関してはまた準備中なので言えませんが、有名女優が出演するとだけ、言っておきましょう。この映画は70年代の冷戦時代を描いており、またテイストが違いますが、自分自身を身震いさせてくれたので決めました。
『ぼくのエリ 200歳の少女』は7月10日 銀座テアトルシネマにて公開
(c)Jonas Akerlund
【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】
・『LET THE RIGHT ONE IN』監督最新作にゲイリー・オールドマンが主演
・傑作ヴァンパイア映画リメイク『Let Me In』新キャスト決定&ポスター公開!
・傑作ヴァンパイア映画『Let The Right One In』米リメイク版、キャスト決定!
・ティム・バートン次回作はジョニー・デップ主演のヴァンパイア・ホラー!
「interview」カテゴリの記事
- 「『ロボット』は世界標準のインド映画!」"ラジニ★jp"管理人てつのすけ氏がラジニ秘話も激白(2012.05.15)
- 『キラー・エリート』 “デ・ニーロ”ことテル、メリル・ストリープを激怒させた!?(2012.05.10)
- 谷垣健治、「『捜査官X』は北野武とチェ・ミンシクにオファー!?」「『特殊身分』はドニーがアンダーカバー・コップに!」(2012.04.27)
- 『捜査官X』ピーター・チャン監督、「ドニーはアクションだけでなく、演技に対して理解が深い上に僕と考え方がすごく近い」(2012.04.21)
- 『捜査官X』 谷垣健治、「中盤のドニー“覚醒”の演技力はスゴイ!」(2012.04.20)
コメント